「絶対に儲かる」などのうたい文句で情報商材を売り込んだり、高額なセミナーを契約させたりする、ネットビジネスの詐欺。
手口は巧妙化しており、常日頃から注意していても「気がついたら騙されていた」という事態も考えられます。
詐欺にひっかかってしまったら、すぐに行動を起こすことが大切です。
そこでこの記事では、ネットビジネスで詐欺にあった場合に取るべき行動について解説していきます。
騙された…と思ったら取るべき4つの行動
インターネットを介したビジネス「ネットビジネス」。
気軽に始めやすいことから、詐欺にあう人も増加しています。
「騙された!」と気づいたら、まずはどんな行動を取ればいいのでしょうか。
①事実の整理
まずは、事実を整理をしましょう。
主に下記の3つを整理してください。
- ・相手と契約してからお金を渡すまでの一連の流れの整理
- ・相手の企業名、住所、代表者の名前、担当者の名前、ウェブサイトのURLなど
- ・お金を振り込んだ口座番号、振り込んだ金額と日時
②業者との交渉
業者と直接交渉すると、あっさりと返金に応じてくれることもあります。
また、返金に応じてくれなくても「返金の交渉をした」という事実を作っておくことで、その後の対応や関係機関への説明がスムーズに進みやすくなるので、必ず交渉は行ってください。
このときに便利な方法が「内容証明郵便」です。
内容証明郵便とは
内容証明郵便は日本郵便が「誰が、いつ、どんな内容の郵便を、誰に送ったのか」を証明してくれる特殊郵便で、相手業者の住所がわかっていれば送ることができます。
これを交渉の一番最初に使うことで相手に返金を求める意思を伝えたことを証明することができ「そんなことは言われていない」といった業者側の言い逃れを防ぐことが可能です。
なお、継続して交渉を行うときは、証拠が残りやすいようにメールで行う方がよいでしょう。
電話でしか応対してくれない場合は、会話の録音をしてください。
しかし、ただやみくもに「返金してほしい」と訴えてもあまり効果はありません。
きちんと法的根拠を出して交渉を行うことで、業者側も「拒否するのはまずいかもしれない」と思い、返金に応じてくれる可能性があがります。
この法的根拠として挙げられるのが「消費者契約法に基づく取消権」です。
「消費者契約法に基づく取消権」とは
取消権は、いったん成立した契約であっても、消費者側から取り消すことができる権利のことで、勧誘時に違法行為があると適用できます。
取消権が行使できるケースは、主に下記の5点が考えられます。
断定的判断の提供 | 「必ず月30万円稼げる」「今契約しないと24時間以内に売り切れる」など、不確実な要素に対して断定すること |
不実の告知 | 「1日5分のスマホ操作で月収30万円」「1万人以上が購入し、99%が成功」など購入者に対して、事実とは異なる説明をすること |
不利益事項の不告知 | リスクを説明せずに「必ず儲かる」などと利益を提示するなど購入者にとって不利益となる情報をわざと説明しないこと |
二重価格表示 | 実際に販売する価格と比較対象となる価格をならべて表示すること 「今なら通常10万円のところを、期間限定で5万円で販売」などとされていた場合、相当な期間「10万円で販売していた」という事実がなければならなりません |
誇大広告 | 「誰でも簡単にできる」「必ず○○できる」など大げさな表現 |
返金や契約の解除を求める際には、これらのポイントをもとに「どんな点が違法なのか」をできるだけ具体的に説明しましょう。
③クレジットカード会社との交渉
代金をクレジットカードで支払った場合は、カード会社に連絡し請求を止める手続きができる場合があります。
支払停止の抗弁
販売会社が商品やサービスを提供しない、それらのものに何か欠陥や問題がある場合などは、消費者から信販会社(クレジットカード事業者)からの請求に対して支払い停止を求めることができます。
ただし「2ヶ月以上・3回以上の分割払いであること」、「4万円以上の取引であること」などが対象となっています。
チャージバック制度
消費者がクレジットカードの不正利用や、詐欺にあったことを理由に、クレジットカード会社に返金を要求できる制度のことです。
それぞれ、返金を行うかどうかの対応はカード会社によって異なります。
詐欺を証明する証拠などを提示し、粘り強く交渉しなければなりません。
カード会社に相談する時は、下記の3点を説明できるように整理しておきましょう。
- ・支払いを停止したい契約の内容、購入日、支払い金額、販売者の名前
- ・支払いを停止したい理由
- ・業者との交渉内容について
④消費者ホットライン「188」に連絡
消費者ホットラインでは、専門の相談員が商品やサービスなど消費生活全般に関する苦情や問い合わせに対して、アドバイスや情報提供を行っています。
業者やクレジットカード会社との交渉がうまく行かなかったときには、今後の対応について相談してみましょう。
もちろん、一番最初に連絡して、今後の行動について相談することも可能です。
何か不安になったときに連絡してみてください。
訴訟を起こすための3つのステップと裁判の種類
業者との交渉がうまく行かなかった場合、裁判で返金を求めることも手段の一つ。
訴訟を起こす場合のステップや、刑事訴訟や民事訴訟について説明します。
①証拠集め
まずは証拠を集めることが大切です。
裁判を起こす場合には、詐欺行為があったこと事実を客観的に証明できなければなりません。
詐欺罪は、以下の4つが満たされた時点で成立します。
- 騙す行為があったこと
- 人を騙した結果、相手を勘違いさせたり、事実と違った認識を植えつけたりすること
- 相手を騙したことで、財産(金品)をもらうこと
- 上記3つに対する因果関係があること(騙す行為や意図的に不利な情報を与えたことで、金品を奪われた被害が出ているか)
証拠となりうる資料の例としては以下のようなものです。
- ・契約書や購入を示す明細やメール
- ・業者とのやりとりが記されたメール
- ・業者とのやりとりなどの録音
- ・パンフレットや業者の公式ホームページまたはスクリーンショットなど
- ・(情報商材などの場合)現物やデータ
②弁護士に相談
弁護士を探す際には、日本弁護士連合会(日弁連)のサイトを利用するといいでしょう。
弁護士にはそれぞれ得意とする分野があるので、詐欺や消費者問題を専門にしている弁護士を探してください。
弁護士に相談する場合も、事前に情報の整理をしたり、以下のような証拠を揃えたりすることが大切です。
- ・業者の連絡先、住所、代表者名
- ・業者とのやりとり、騙された経緯
- ・交渉時のメールや録音データ
- ・契約書や、クレジットカードの明細など
- ・情報商材の場合、データや印刷物
- ・商品やサービスのパンフレット
③刑事裁判、民事裁判それぞれの特徴は?
裁判には大きく分けて「刑事裁判」と「民事裁判」があります。
それぞれの特徴を説明します。
刑事裁判 | 民事裁判 | |
---|---|---|
当事者 | 検察と被疑者 | 私人と私人 |
争点 | 被疑者は有罪か | どちらが正しいか |
和解 | なし | あり |
「詐欺」で加害者を訴える場合も、刑事裁判か民事裁判か、あるいは両方から訴えていくかでプロセスや目的は大きく異なります。
刑事裁判
刑事事件に関する裁判。犯罪者に対し刑罰を科すためのものです。
刑事裁判を行ってもらうためには、警察に捜査をしてもらい加害者を特定・逮捕してもらう必要があります。
警察に動いてもらうために、被害状況や加害者情報などを書いた「告訴状」を警察に提出しましょう。
告訴状を受理すると警察には捜査義務が発生するため、必ず捜査を行ってくれます。
ただし、詐欺罪は立証が非常に難しい犯罪であり、警察もなかなか告訴状を受理してくれません。
刑事裁判において詐欺罪が成立するには、以下の4つの一連の流れを証明し、それらに因果関係があることを証明する必要があります。
つまり、これらを証明できると判断できる告訴状でないと受理したがらないのです。
また、刑事裁判では、相手を法的に罰することが主な目的なので、刑が確定した場合でも、詐欺で取られたお金が戻ってくることはありません。
民事裁判
民事に関する事件を審理する裁判。個人と個人、個人と業者などの間で起こっているトラブルについて、裁判所が法律的判断を下し解決を図ります。
つまり、民事訴訟は騙し取られたお金を返金させたり、自分が受けた被害に対しての損害賠償を求めたりする方法です。
基本的に、ネットビジネス詐欺の裁判では、下記の3つを検証していきます。
- ・契約時に騙されたり、脅されたりしなかったか
- ・勘違いして契約したものではないか
- ・契約の内容やプロセスに法律違反はなかったか
その上で、被害者側は以下の二点を主張することになります。
- ・契約の無効
- ・契約の取り消し
なお、損害賠償請求については、下記の記事で詳しく解説しています。
まとめ
- ネットビジネスで騙されたら、事実を整理し、まずは業者との交渉
- 裁判には刑事裁判と民事裁判の2つがあり、目的にそってどちらか、または両方の裁判を起こす
- 仲間と一緒に参加する「集団訴訟」も問題解決の一つの手段
被害があとをたたないネットビジネスの詐欺。
「私は大丈夫」と思っていても、詐欺にあってしまう可能性もあります。
詐欺にあったら、泣き寝入りをせず、業者との交渉を行ったり、裁判を起こしたりして、解決を探ることも考えてみましょう。
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